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子ども達のための「お弁当屋」さん~子ども達の健やかな成長のための食育活動が広がっています~

2005年日本では、世界でもめずらしい「食」に関する法律「食育基本法」が施行されました。子ども達が豊かな人間性をはぐくみ、生きる力を身に付けていくためには、何よりも「食」が重要である一方、社会情勢の変化や日々忙しい生活を過ごす中で、「食」をめぐる環境はどんどん変化しています。

「食育基本法」は、【 国民一人一人が「食」について改めて意識を高め、自然の恩恵や「食」への感謝の念・理解を深めることが、健康な心と身体の成長につながり、家庭・学校・保育所・地域等を中心に、国民運動として「食育」の推進に取り組んでいくことが、我々に課せられている課題である 】という考えからスタートした法律です。

「食育基本法」を受け、学校でも「食育」への取り組みが始まり、「学校における食育の推進」は、2009年の改正学校給食法でも学校給食の目的として位置づけられています。
このような取組の推進によって、栄養教諭による指導から「食育」が広まり、朝食や学校給食の重要性は強調されてきましたが、放課後の過ごし方がさまざまに多様化する昨今、残念ながら夕食に対する「食育」は後回しにされているのが現状です。

【FCN株式会社の椎名伸江さん】

今回の小欄ではこの様に、いろいろな事情でちゃんと夕ご飯をまともな時間に食べられない子ども達の状況をみて、子ども達の健康をまもりたいと、栄養バランスのとれた手作りの夕ご飯弁当を提供する会社を立ち上げた女性 椎名伸江さん(小学校で栄養士として勤務していた)の取組についてご紹介します。

 

1.学校栄養士から会社設立まで

2012年、椎名さんが練馬区の小学校で栄養士として勤務されていた際、共働きの母親から、「共働きで、塾に行く日の夕食弁当が作れず、お金を持たせているが、菓子パンやファーストフードを食べているみたいで。できれば、夜も給食を出して欲しい」と言われた。

そこで、今すぐになんとかしないといけない、育ち盛りの子ども達のために夜ご飯を届ける仕組みが絶対に必要だと思い、2013年4月に退職して会社を設立することにした。そして7月に学習塾の日能研に「子どもにとって体にいいもの安全なものを、お弁当として届けしたい」と掛け合い、8月に物件を見つけ準備し、11月にFCN株式会社を設立し、12月から配達を始めた。

 

2.和食の良さ、旬の食材を大切にした手作りのお弁当

食材の仕入れは地元で買い付け、栄養バランスを考えた毎日違う献立を1食500円前後で手作りし、配達までこなす。そして、必ず下の写真のような内容の手紙を添える。ウドやおからなど、子ども達が食べ慣れていない食材も、旬であることや栄養の働きについて説明した手紙、子ども達はこれを読むと、食べてみようかなと思ってくれる。

そんな想いのこもった椎名さんのお弁当は、中学校受験生を持つ共働きの家庭や、夜遅くまで子ども達を預かる学童保育施設でも利用され、育ち盛りの子ども達にバランスの良い食事を与えたい親や、栄養のある食事で厳しい受験を乗り切って欲しいと願う親からの注文が増えている。

【栄養バランスの取れた手作り弁当と、添えられる手紙】

椎名さん手作りのお弁当(FCN株式会社)今月の献立は下記URLよりご確認頂けます。
「FCN株式会社」 http://fcn-gohan.com/index.html

 

3.多様化する放課後の過ごし方

2012年度、国立青少年教育振興機構の「青少年の体験活動等に関する実態調査」報告書からは、不規則になりがちな夕食の現状が垣間見えてくる。
小学4年生で38%、小学6年生で43%、中学2年生で54%が週1回以上塾に通い、また、小学4年生で72%、小学6年生で63%、中学2年生で34%が週1回以上習い事に通っている。

椎名さんの栄養バランスのとれた食材を詰め合わせたお弁当を見ると、あらためて日本の家庭には、もともと昔からお弁当の文化があり「食育」が存在していたことに気付かされます。

「食」の環境が変化していく中、家庭や学校だけに留まらず、子ども達の健やかな心と身体の成長のための「食育」活動が、新しい取組みを取入れながら、企業や地域・社会全体に広がって今後どんどん普及していくことが期待されています。

しかし、その取組の根底には小欄で紹介した例のように、常に「子どもの健康のために」というコンセプトがしっかり踏まえられていることが、大前提です。

2015年10月14日
文責 村井真希