「『駆けるC世代』に日本を託すために」

2012年元旦から日本経済新聞(以下日経)で連載された「C世代 駆ける」は「わが国の将来を担って駆けぬける若々しい世代」に照準を合わせて、中身の濃い、興味深い特集企画でした。

折しも先日から交流サイト(SNS)世界最大手の米フェイスブック上場申請の記事が大きく掲載されています。同社は若干27歳の共同創業者でCEOのザッカーバーグらが2004年サービスを開始、以来インターネット上の情報共有サービスをメインとし、利益はその次という事業理念を冠しています。

一方で、日本の老舗電機メーカーの尋常ではない赤字額が相次いで発表され、米名門企業コダックの経営破たんなどもこのタイミングと重なって、旧い体質のまま時代の変化(Change)に適応できない企業との対比に、さまざまなことが想起されます。

さてC世代、耳慣れない言葉ですが日経新聞によると、

「コンピューター(Computer)を傍らに育ち、ネットで知人たちとつながり(Connected)、コミュニティー(Community)を重視する。変化(Change)をいとわず、自身の流儀を自身で編み出し(Create)、国境(CrossBorder)にこだわらない、未来へ駆ける世代。又、コンテンツ(Content)・コミュニケーション(Communication)・協力(Collaboration)・貢献(Contribute)・建前や前例にとらわれず柔軟に発想する(Casual)という意味で使う人もある。」

と、解説されていました。

 このことばが使われ始めた米国では10~20代を想定しているようですが、日経新聞では基本的には20~30代、そして更に実際の年齢に限らず、その生活スタイル・身上・志なども加味したグローバルワイドの視点でC世代を位置づけているようです。

以前、アメリカのマーケティング関連の呼称として、X・Y・Z世代※1 がありますが、このC世代の定義とはかなり異なっています。
(
※1ジェネレーションX=1970年前半生まれ、ジェネレーションY=1970年後半生まれ、ジェネレーションZ=1985~92年生れ バブル崩壊後でいわゆる平成世代など3つの世代は、以前日本に輸入された米国のマーケティング概念として、生れた年代とその背景にある経済状況などと関連させた呼称)

そこで先ず、新年にあたり日経新聞がいろいろな視点から次の世代が描く未来図の事例を挙げてC世代を論じている内容(連載10回)を簡単にまとめてみることにしました。

1.動き出す「チーム・グローバル」・・・世界(グローバルワイド)の課題に次々と挑戦
世界的な共時性、感覚やものの共有が一段と強まっていることを具現した象徴的な取組として以下の企業が紹介されている。
米テスラ・モーターズ社(電気自動車メーカー)、米イノセンティブ社(ネット公開による世界的な研究開発活動)、中南米リュック・エマニュエル社(パソコンを通じたデータ管理)、米キックスターター社(ネットで掲げた事業計画の賛同者から資金を集める)

2.終身雇用の安定した働き方が揺らぐ・・・自分価値を高める選択肢を切り拓く為に経験を重ねる。
親世代の安定した雇用モデルは保証されない現代、C世代が組織を立ち上げ以下のような仕事に取組んで自身の市場価値を自覚し、転職も辞さずに、リスクへ挑戦する。
米国NPOティーチ・フォー・アメリカ(貧困地域に大学新卒を2年間送る)
日本ラーニング・フォー・オール 代表(28)(貧困層の多い学校に来年から数十人派遣する)
日本NPOクロスフィールズ 代表(29)(新興国で働く企業社員の「留職」を仲介)
日本企業マザーハウス 代表(31)(途上国製造販売のバッグで世界ブランドを立ち上げ、フル操業中)
日本企業フローレンス 代表(32)(病児保育サービス業)

3.可能性を世界に求めて行き交うC世代たち
マレーシア・中国・韓国・コロンビア・イギリスなど各国の若者が日本国内就職戦線に参戦する一方、日本からも中国・ベトナムなど積極的に進出する若者もあり、国境を意識しないクロスボーダー人が海を超えて駆けめぐる。

4.世界で戦えるC世代への道
徹底した語学教育による流暢な日本語で、東大生を論破する北京大生にひるむ東大生。
突出しないことを良しとした日本のこれまでのような画一的な教育では世界と戦えない。
 C世代は世界と競える教育への過渡期に在る。

5.若者の手に政治を取り戻せ-ネットを通じて行動を起すエネルギー
ツィッターやフェイスブックなどを使って政治に不満をぶつける世界の若者が、格差解消の大規模デモや独裁政権を追い詰める。
政治への問題意識を強めるC世代がつながり、政治を自分たちの手に取り戻そうと静かに動き始めている。
「ITの仕組みを活用し、普通の市民がなにげなく発信する声を集め、高い精度で民意を見えるようにする。最終的には『大衆の無意識を可視化する』事につながる」早大 東 浩紀教授

6.高齢社会ニッポンにおけるC世代

高齢者1人を支える現役数は20年前-5.8人・現在-2.7人・20年後-1.8人となり、現代の若者には相当厳しい状況となることは必至だ。
そこで「お金の教養講座」の開講・介護医療の人材を海外に求めるSMS社・ワンコインケアの立ち上げなどに若者が携わり、「儲かるためだけではなく、社会が必要としているモデルかどうかで取組んでいる。」と話すC世代川添高志氏(29)。

7.弧族からCo族へ・・・ネットの普及で自ら選んだ「自縁・選縁」でつながる絆

・テーマ別シェアハウスで、集い、つながる。
・C世代 流地方起しに携わる。
「豊かな自然資源のある対馬をブランド化する 東大大学院卒(33)
対馬を世界に発信していく 米デンバー大卒(23)
対馬の暮らしを紹介してネット販売 デザイナー(33)」
「徳島県の農産物生産・加工・流通に携わる若者が立ち上げた『若士わかいし』、自由に意見交換できるコミュニティーにしたいと、農協まかせにせず、若い力で既存の壁をぶち破り、フェイスブックを駆使して『若士』ブランドの県外販売に打って出る。」

8.「クールJAPAN」を世界の若者が評価し、日本固有の価値が際立って国内でも再発見される。
日本のアニメ、ギャル風ファッション、伝統文化・建築・造園技術を外国の若者が学び、グローバルな視点で評価し、その価値が国内で再発見される。
世界のC世代が国家や企業を超えて、お互いのコンセプトを軸に自由につながる。

9.平均像が草食系のC世代・・・採用即戦力になるグローバル人材層が薄い。
仕事選びも自分ペースを大事にするC世代にとって、終身雇用や安定コースへの執着は希薄になっているようだが、他方、ITスキルは上がったが根気や積極性が低下したとされるC世代 の平均像は頼りなげな存在でもある。

10.次代のソーシャル課題「超高齢社会」を担うC世代
震災復興は日本復興の出発点、また世界復興の出発点にもなる。
「壊れた被災地の復興や復活を見て育つ子ども達は忍耐強く、生き抜く力を備えた大人になり、10年後には国を支える企業家になれる」NPO法人カタリバ今村久美代表
民が公を補う目をしっかり育てる時。動きの鈍い国に代わって地方が試み、その後を中央が追う。これが出来れば日本を打ちのめした震災は日本を救う出発点になる。

 

以上、計10回におよぶ特集「C世代 駆ける」の内容を読むとわれわれが生活する現代のさまざまな課題も可能性も見えてきます。ある見方をすれば、現代は万事デジタル化された時代といえるかもしれませんが、しかしC世代 が「社会貢献するのは、当たり前」「将来に悲観せず、前向きにスタンスをとる」など冒頭で述べた通り、その生き方・志はむしろX世代よりはるか前世代の筆者も共感できるライフスタイルといえるでしょう。

ここで上記日経新聞特集の中で、際立った2氏の言葉を紹介します。

劇作家・演出家鴻上尚史氏
「ネットの2面性を知って、溢れるネット情報の時代に翻弄されることなく、自分を律し、自分の頭で判断し、自分の意志で行動してほしい。」
グリー田中良和社長
「行動しない人に他人を批判する権利はない。社会から恩恵を受けていることを忘れず、社会のために行動しなければだめだ。世の中に役立つことをすれば、自分もいい世の中に住める。グリーが手がけるソーシャルゲームは雇用を生み、税収を増やせる数少ない産業、たかがゲームと否定的にとらえないでほしい」

 グリー社長の言葉通り、これまでのゲームに対するイメージが大きく変わった「ゲーミフィケーション※2 」については、先日NHK「クローズアップ現代」でも取上げられていました。
(※2マーケティング手法の一種でゲームが本来の目的でないサービスなどにゲーム的要素を組み込むことでユーザーのモティベーションやロイヤリティーを高めること)その例を挙げると、

  1. 昨秋たんぱく質の3次元的な分子構造を明らかにする世界的なオンラインゲーム「Foldit※3」によって、科学者たちが10年かけても解けなかった難問を、ゲーマーたちがわずか10日間で発見するという快挙があった。これはエイズの治療法につながる可能性のある酵素の構造が発見されたということで、世界中で注目されている。
    (※3 詳細はこちらから検索して下さい)
  2. 人事評価に色々な種類の成果バッジを授与して、社員のモティベーションを上げる―報酬や地位のためだけではなく、仲間を気遣ったり、温かい人間性や良識に対しても評価バッジを授けて、社員の人間的な成長の促進に成果など、これまでの旧い発想からは考えにくいゲーム感覚の手法で成果が出ている。

最後に日経新聞の本特集から得た最も印象的なメッセージをご紹介して、この見聞を終えたいと思います。

「企業にとって草食で頼りなげにみえるC世代のために、新しいステージを整えてバックアップするのも、各世代の責任だ。(連載第9回1月11日掲載分から)」

 耳慣れなかったC世代、何となく大まかなアウトラインが見えてきましたが、C世代の若者(若い志を持つ人も)が、困難を乗り越えてさまざまな目標に向かって駆け抜けることが出来るようにするためには理屈はさておき、国や社会は新しいステージを用意してバックアップするべく、頭をやわらかくして、目の前のできることから片付けていかねばなりません。
 あたらしく可能性のある次代を築く原動力としてC世代を大切にそだてるためには、一番に「食育・学校給食」の制度を充実させて、C世代や「次のC世代」が心身ともに健やかに生活できるように整えることは、最も重要度が高く、やれば必ず実現できる基本的なバックアップのひとつです。
 ただ、見ているだけではなく、「駆けるC世代」を社会が連携して彼らを支援し、課題を共有しながら共に立ち向かっていけば、今日の行き詰った金融経済や大災害による重大時局から抜け出し、現代よりもいい時代へと移行することもできるかもしれません。
そんな風に考えていくと、C世代 と自身にも思いを馳せながら、新しい年にほんの少し希望が見えてきました。

2012年2月6日