2025.08.12
共働きやひとり親家庭が直面する「夏休みの壁」 各自治体が子どもの居場所・昼食提供で家庭をサポート
学校給食がなくなり、日中に自宅以外で子供が過ごせる場所が少なくなる夏休み期間、共働きやひとり親家庭は、「夏休みの子どもをどう過ごさせるか」という悩みや負担、いわゆる「夏休みの壁」に直面しています。これらの課題に対し、各自治体ではさまざまな取組を進めています。
1.東京都町田市の取組
昼食提供のモデル事業を、7つの学童保育クラブで10日間に限定で開始。鶴川エリア中学校給食センターで調理した温かい食事を食缶方式で提供し、家庭負担は1食500円。保護者の弁当作り負担の軽減と子どもの栄養確保を目指す。
2.東京都練馬区の取組
練馬区立学童27か所、ねりっこ学童62か所でLINEアプリを使った昼食弁当注文サービスを導入。費用は1食550〜600円。保護者が必要に応じてサービスを利用し、弁当を持たせる以外の選択肢の拡充による負担の軽減を図る。
3.神奈川県横須賀市の取組
就労や疾病などで日中家庭にいない小学生を対象にした一時預かり「サマークラブ」を開設。平日8時~18時、利用料700円、定員35名。利用者は1日10〜20人で、夏休み中の預け先ニーズの高さを受けた児童福祉向上の取組。
4.全国の状況と課題
こども家庭庁の2024年度調査では、全国の学童クラブの約43%が長期休暇中に昼食提供を実施。一方、同庁の「放課後児童クラブ運営指針」では、昼食提供は任意とされるが、東京都では25年度から開始した独⾃の学童認証制度のなかで、補助金基準に設定し重視している。また、保育教育ITサービス「千」の調査によると、今年の夏休みに子どもだけで留守番する家庭は30%超。留守番時間は2時間未満が多いが、5時間以上も27.5%を占めた。夏休み中の課題は「仕事との両⽴」・(18.8%)、「留守番中の安全確保」(16.9%)が上位だった。
共働き世帯やひとり親家庭が増加し、保護者が子どもと家で過ごす時間は限られるため、特に夏休みなどの長期休暇中には、家庭内だけで子どもを見守ることが難しくなっています。
子育て問題に詳しい淑徳大学の柏女 霊峰(かしわめ れいほう)名誉教授は「子どもの居場所は十分ではない。自治体は事故対策を講じた上で、市民センターなどを活用し自由に遊べる場所を保証すべきだ」と強調しています。
夏休み期間は、家庭と社会の支援との間にできている隙間が、「壁」となって多くの保護者たちを悩ませています。今、現場で始まりつつある行政や地域の新たな対応が、子育て家庭を支える鍵となっています。