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「肥満大国」から「健康大国」へ

2010年米国のオバマ大統領夫人主導で始まった国家的食育活動“Let's move!”、深刻な社会問題である「肥満による莫大な医療費の増加」を防ぐために、その後も順調に活動の輪が拡がっています。(“Let's move!”:詳細は4月21日付当見聞録をご参照下さい)

この活動は子どもの肥満率が過去30年間で3倍になり、慢性肥満に関係した医療費などの経済的損失は2018年には'03年の約5倍の3,430億ドル(27兆円)にも上るとの専門家による試算が出ており、その肥満による医療費増大対策としていろいろなものが実行されてきました。

その中で最も実行がむずかしいと思われた民間企業参加による「ヘルシーで安価な生鮮食品や栄養バランス食品などが食糧砂漠地域でも購入できる新規店舗の設置、いわゆる貧困層の食生活改善のための取組」が、今夏大手食品小売企業などの協力により、すでに始動しているとの報道があり、その概略を以下に紹介いたします。

米国の大手小売企業のウォルグリーン(薬局最大手)・ウォルマート・カルフール企業グループ・Klein's Family Market・スーパーバリュなどは生鮮食品の買えない低所得地域で、今後5年間に、1,500箇所以上の新規出店を相次いで実施することになった。併せて新規の雇用も見込めることから、期待は大きい。その中でウォルグリーンは「食糧砂漠」根絶をめざして、シカゴ市内の10店舗で生鮮野菜、冷凍肉・魚、ビーンズ、米など750アイテムを超える食品を増やし、市長から近隣住民の健康支援に対する謝辞を得ている。そして当該住民に糖尿病など慢性疾患の体調管理と食べ物について認識を促す検査も始めたという。 また、ウォルマートは既に今年はじめ、①「食糧砂漠」への新規出店、②2015年までに数千の加工品目から平均で塩分25%、糖分10%をカット、③優良栄養食品への表示ステッカーの貼付、④健康によい栄養食品の低廉化、⑤健康に貢献する団体や機関への寄付サポート、などの取組項目を発表している。

米国では長引く不況で小規模な食料品店が消えていき、郊外の大型スーパーにも出かけられない貧困層が増加したために、手近なファーストフードやジャンクフードの偏った食生活が肥満大国の原因となっており、この改善策が急務となっていた。 上記のような新規出店や一連の取組は企業にとって利益は低いが、市場拡大にもつながり、何より社会貢献という評価を得る効果もあることから、実施に至っているようだ。

一方、肥満の元凶とされてきたファーストフード企業のマクドナルドも9月からセットメニューに果物を加えたり、フライドポテトの量を減らしてカロリーダウンしたりして、健康志向をアピールしている。

ちなみに、“Let's move!”キャンペーン取組の一つである米国の学校給食の状況は日本のものとはかなり異なっている。(以下はその実施内容の一部)

  1. 監督官庁は文部省ではなく、農務省(United States Department of Agriculture)で、栄養量や食品構成の基準もこのUSDAが決めている。
  2. ある学校では、56カ国出身の生徒が通学しており、貧富の差も大きい。
  3. メニューの選択は個人にまかされ、子ども達が何をどれだけ食べているか把握できていないのが課題となっている。
  4. 生の袋入りでブロッコリーや人参が出され、容器は全て使い捨てでファーストフード感覚のスタイルで提供されている。

【メニューは個人の自由選択・組み合わせ自由であるが、極端な偏りを防ぐために 各食品群の中から何個選ぶといった基本的な基準が指示されている。】

このように、国民の健康的な生活習慣を実現するために、オバマ大統領夫人が困難を承知で強い信念の下、発動された“Let's move!”ですが、ドル安や米国債の下落など厳しい状況下にもかかわらず、大義のために米国で推進されているというニュースは色々な意味で勇気付けられます。

一方、わが国でも東日本大震災で避難して買い物に困窮している人たちや高齢の買物弱者のために、コンビニ業界や量販店が移動販売車を拡充して対応するなど、目先の利益さえ確保すればよいといったビジネスが見直される傾向は、大いに歓迎したいところです。

英国でもこのような取組が始まりつつあるというニュースもあって、最近は世界的に暗い報道がつづきますが、今後は人の生命や生活を大事にするいわゆる血の通った取組の拡大を期待できるかもしれません。